背番号19

 最初に付けたのが19番。私が入団した平成3年,それまで19番だった笹川雅司投手が主将となり,そのため空きとなった19番を譲り受けた。これを平成5年までの3年間付けた。ちなみに笹川さんは主将を1年間務めた後エースナンバー18番を付け,その数年後引退した。

19番で思い出すのが,江川卓(阪神−巨人)との電撃トレードで阪神に移籍した小林繁(巨人−阪神)である。巨人でのエースの座を理不尽な形で奪われた彼は移籍1年目に22勝の活躍をし,特に古巣の巨人戦では8勝0敗という好成績で沢村賞や最多勝のタイトルとともに男の意地を見せつけた。スリムな体からの独特のアンダースローはモノマネの素材にされたり,甘いマスクと離婚問題などでワイドショーのネタになったりと,プロ野球ファン以外にも良く知られた存在だった。脂の乗り切った31歳での引退に多くの女性ファンが落胆した。

現在楽天ゴールデンイーグルス監督の野村克也(南海−ロッテ−西武)も忘れてはならない。近年プロアマ数球団での監督業が長く,また夫人のスキャンダル等もあって現役時代の栄光が薄れがちではあるが,実はすごい選手である。現役生活も長かったのだが,通算の本塁打や打点は王貞治(巨人)に次ぎ歴代2位。安打数も張本勲(東映・日拓・日本ハム−巨人−ロッテ)に次ぐ2位。また長い歴史の中でも7人しかいない三冠王ホルダー。しかも捕手というポジションで一時は監督も兼ねていたことを考えると,とてつもない記録だと思うのだが,不思議なことに南海では永久欠番にはなっていない。

全体としてはピッチャーのイメージが強い19番。ただ17番や18番のすぐ隣にいてそれらと並んでエースナンバー扱いされてもいいような感じがするのだが,小林の例もあってかどことなく寂しげな,悲劇のエース的な,真の主役にはなれないといったようなイメージが私の中にはある。近年で思い浮かべるのはWBC日本代表,上原浩治(巨人)。個人的には現役ナンバーワンピッチャーだと思ってはいるが,そのWBCでも,大会を通じ投球回数・奪三振も一番多く,四死球なしと抜群の安定感。中でも勝負どころの準決勝・宿敵韓国戦で胸のすく快投を演じ,世界一への布石を打ったわけだが,MVPは松坂大輔(西武)に持っていかれた。何かと比較される二人だが,片や甲子園春夏連覇の怪物,片や一浪して一般入試で大学に入った苦労人という,生まれた星の違いであろうか。その他ではタイガース史上唯一の日本一に貢献した中西清起(阪神),奇しくも中西と同じ高知商卒で野球より不祥事で有名になった中山裕章(大洋−中日)くらいしか思い出せず,現役でも特に目立った選手はいない。
2006.10.19UP

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