消えたもの

 2007年夏『まだある。』という,おもに昭和から現在まで残っている長寿商品やキャラクターを取り上げた文庫本のシリーズを読んでいた。各頁見開きの右半分が紹介文で左半分が図版という,どこから読み始めてもどこで止めてもいいという構成で,蒸し暑い日や,治療した親知らずの違和感で集中力が普段よりさらに減退している時でも,気楽に読むことができた。
 読んでいくうちに,ふとノンキーズにも“まだある”といえるようなものが存在するか考えてみたが“もうない”(このフレーズは上記の本に出てくる)方が,いくつか頭に浮かんできたので,この頁を作ることにした。
 姿勢が後ろ向きなうえに,大きく展開するような話では全くないが,消えたものについて,ノンキーズの歴史の一頁として知りうる限りふれてみる。

1.サイン
 2005(H17)年6月7日,この年の道新リーグ3回戦,札幌プリンスホテルとの試合で,当時の杉本監督がベンチからノンキーズの走者(選手名は失念)に向かって「サイン見ろ!」と叫んでから「…サインなんて出してないけど」と,苦笑まじりに言ったことが思い出される。
 かつて攻撃時のノンキーズには,盗塁・送りバント・ヒットエンドランの3つのサインがあったが,現在はない。岡本投手が監督を務めた2001(H13)年頃には,まだサインを出していた記憶もあるが,監督の仕草を打者もしくは走者が見るだけという目立たないもの(当たり前だが)だけに,いつから消えたかというのは特定できない。ただ,岡本投手以降に監督を務めた各選手の断片的な話からすると,今世紀に入ってから攻撃時のサインは出ていないと考えて,ほぼ間違いないと思う。
 現状を見ると,盗塁は,渡辺中堅手をはじめとして出塁した各選手が自分でいけると思えばスタートする。送りバントは,ここ数年ほとんど見られない。実際,バントで走者を進めなくても,草野球なので捕逸や暴投で進塁できる機会が少なからずある。ヒットエンドランについては,打者と走者が示し合わせて行うことも考えられなくはないが,そこまでコマイ野球を現在のノンキーズでは実施していない(お断りしておくが,けっして批判ではない)。
 個人的には,朝っぱらから野球をしに来ているのだから,各選手の好きに打ったり走ったりしてかまわないように思う。ただ,送りバントが決まって得点に結びついた時の地味な喜びも,少し見直してよいのかもしれない…という気はする。
 なお,蛇足ではあるが,投手と捕手が球種やコースを決めるサインは,もちろん現在でも存在している。
 サインに関して,ある方から聞いた,かつてのノンキーズでのエピソードを一つ。坂本・元二塁手が監督だった時のこと。三塁に走者をおいて打席に入った坂本監督,主審にタイムを要求してからブロックサインを出した。直後,それを見た浜野・元投手が(三塁走者だったのかベンチにいたのかは,はっきりしない)大きな声で,
「ここでスクイズはねぇべや!」(※1)
 当時のノンキーズ,いったいどんな雰囲気で野球をやっていたのだろう…と考えさせられるエピソードではある。
※1〜ねぇべや→ないだろう
(北海道以外にお住まいの方に一応ご説明)
バント
2.円陣
 試合中,主に守備を終えて攻撃に移る前にベンチ前で各選手が輪を作り,士気を高めたり相手投手の攻略法を周知する円陣も,今世紀に入ってからノンキーズでは見た記憶がない。監督や主将から同様の意味合いで各選手に声がかかることはよくあるが,形を作って声を張り上げるような場面はない。それほど注意して見ているわけではないが,対戦相手チームでもほとんどやっていないと思う。
 高校生のようで気恥ずかしいのかとも想像するが,気合を高める形として絶対というほどの効果があるとは感じられないし,無理にやるものではないのだろう。気合発起という点では,和田選手の美大声等もあり,今後ノンキーズで円陣が復活する可能性は低いように思える。
  かつて武田は,美香保球場でのたそがれ大会で「円陣組んでエンジンかけますか」と大橋主将(当時)に言って苦笑されたが,まさか,そういう馬鹿者が発生することを防ぐために止めた…ということではないだろう。
円陣
3.ノンキーズ体操
 これも今世紀に入ってから消えたと考えられる。かつてノンキーズは,試合前に外野のポール間を2往復ランニング〜ノンキーズ体操〜キャッチボール〜トスバッティングをやってから試合に臨んでいたが,体操の部分がなくなって久しい。現在のメンバーでも,体操の始めから終わりまでを正確に記憶している選手は,ほとんどいないのではないだろうか。
 ノンキーズ体操について坂本・元二塁手に伺ったところ,山田英之投手が主将を務めた年に,大学硬式野球部のものを取り入れて始めたとのこと。資料を見ると1987(S62)年となっている。この年は,坂本元二塁手が1回目の監督を務めた年でもあり,サインの項でご紹介したエピソードも,あるいはこの年の出来事かもしれない。
 1994(H6)年“9.23事件”の時には,試合前のノンキーズ体操が省略されていたことが事故原因の一つかと言われたこともあったが,近年各選手がそれぞれウォームアップをして試合に臨むスタイルで特に大きなケガも発生していないことから,消えたことによる実害はないと思いたい。正確には覚えていないが3分弱の時間を必要とするので,最近の試合前の状況を考えると,こちらも復活はなさそうである。
(以上 2007.10.10UP)
失礼いたしました
 2007年10月19日(金)に行われたノンキーズ納会の場で,川島選手から「今でも屋内練習の時はノンキーズ体操やってますよ」との話がありました。「完全版かどうかはわかりませんが」という注釈付きでしたが,いまでも存在していることに違いありません。武田の取材不足です。失礼いたしました。
(2007.10.20更新)
4.永柳
 ノンキーズ祝勝会(そうでない場合もある…)は,ここ10年ぐらいは平岸の「魚民」もしくは「白木屋」といったところが主に使われることが多いが,それまでは焼き鳥の店「永柳」が長くノンキーズ飲み会の場として親しまれていた。しかし,不可抗力の事情が発生し,2006年11月30日をもって惜しまれつつ閉店した。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
 本店・支店と二つの永柳が存在したが,ノンキーズがよくお世話になっていたのは,先代の店をご子息が受け継いだ支店で,最初は当然ここが本店だった。先代は,少し離れた場所に新たに本店を出していたが,現在は別な方が経営しているとのこと。ノンキーズOBではないが,ワルツのメンバーとしてノンキーズと対戦したこともある某係長は,この永柳との関わりが坂本芳雄元二塁手よりも長いことで知られる。また,作内元選手がカウンター席の常連だった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
 武田個人の範囲で記憶に残っていることといえば,1996(H8)年に当時ジャイアンツの松井が広島市民球場のライト場外へ凄まじいホームランを放ったのを,永柳のテレビで見ていたことがあげられる。プロ野球シーズンには,たいてい野球(ジャイアンツ戦)がかかっていた記憶があるが,つい4,5年前まで北海道の飲み屋さんの多くは,似たような状態ではなかったかと思う。それからすると,地上波のテレビで平日にプロ野球中継がほとんどないといった現状は,当時は考えもしなかった。
 もう一つ個人的なことを書くと,もちろん焼き鳥は食べたが,どちらかというと“らっきょう”と“もろきゅう”で日本酒を飲んでいることが多かった。それからすると,かなり失礼な客だったのではないかと思う。…ま,野球もクリーンナップ(焼き鳥)が強力なだけではなかなか勝てない。1・2番(らっきょうともろきゅう)もしっかりしていないと…と考えればよいのかも知れぬが…。
やき鳥の店 永柳
(2008.12.31更新)
5.会費会員
 会費会員は,選手名簿に名前がのっているが選手としては関わらず,ノンキーズの飲み会や納会が開催される時には,案内文書が配付されるという方々。選手名簿では背番号欄が空白で,名前の頭に*が表記されていた。ほぼすべてが元ノンキーズ選手である。
 1995(H7)年までは存在したが,諸般の事情から1996(H8)年3月11日付けノンキーズニュース(この年の第2号)で会費会員からの徴収廃止が告知された。ただし,このニュースでは“納会では期待しています”とのコメントが付されており,事実この年の納会には3名の会費会員が参加している(ただし,会費減免措置はとられていない)。ちなみに,会費納入最終年の年会費は2000円で,対象者は7名。実態がなくなったこともあり,翌1997(H9)年には,選手名簿上からも会費会員の存在が消えた。現在でいえば,納会や私大親睦大会懇親会の案内文書が配付される方々が,会費会員に近い存在といえるかもしれない。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
 なお,会費会員には,現役選手の数があまりにも少なかった時代があり,その会費だけでは大会参加費などの諸経費をまかなうことが厳しいため,引退した方々に援助してもらうという一面があった,と聞いたことがある。それが1992(H4)年以降,ほぼ毎年のように3〜4人の新入団選手を迎えるようになり,現役選手の会費だけでも活動予算編成が厳しくなくなったことも,廃止の一因ではないだろうか。
(4と5は 2007.12.17UP)
6.溪央荘
(別頁です。ここからお入りください)
(6は 2007.12.23UP)

※文中に誤り,または不適切な点がありましたら,ご連絡ください。

もどる バックホーム